トート・アズ・キャンバス アート&デザインアワード
第23回
エントリー作品詳細
NO.088
patch antさん
作品名 YES
作品についてのコメント
「YES」は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、二人の関係の始まりを象徴する言葉です。
二人の象徴的なポートレートを、出会いのきっかけとなった「YES」という文字だけで描きました。
その周囲を囲むフレームには、二人が出会ったインディカ・ギャラリーにまつわるもの、作品やアルバム、衣服の柄など、二人の歴史の中に実際に存在するさまざまなモチーフをコラージュしています。一見すると細かなドローイングの額縁ですが、一つひとつを辿ると、二人の物語につながっています。
人物の顔や手、周囲の余白には白いドットを重ね、新品の状態では少しモザイクがかかったように表情を隠しています。バッグを使い込むことで白いペイントが少しずつ変化し、その奥に描かれた「YES」と二人の表情が徐々に現れていきます。
裏面は表面とは対照的に、シルバーを荒々しく何層にも重ね、その中央に赤い「YES」を描きました。使い込むことで裏側の赤い「YES」は少しずつ薄れ、一方で表側に隠された無数の「YES」は少しずつ現れていきます。
完成した瞬間だけではなく、使う時間そのものによって作品が変化し、持つ人自身が時間をかけて完成させていく作品として制作しました。
画材
油性ペン 小、大、ペンキ 白、シルバー
プロフィール
幼い頃から絵を描くことが好きで、現在は「patch ant」という名前で作品制作を行っています。
古着やバッグ、既存のファッションアイテムなど、自分が惹かれたものを“キャンバス”として選び、その背景やデザインへのリスペクトを残しながら、ハンドペイントによって新しい一点ものへ再構築しています。
1960年代のサイケデリックアート、ロック、パンク、音楽や歴史あるカルチャーから影響を受けることが多く、白と黒を中心としたモノトーン表現を基本としています。
荒々しく塗料を重ねる力強い表現から、極細の線で一つひとつのモチーフを描き込む細密な表現まで、対照的な技法を一つの作品の中で組み合わせることも特徴です。
また、作品には最初から明確な完成形を設けず、描き足しながら変化させていきます。その制作過程自体も作品の一部と考え、「この状態が一番好きだ」と誰かが感じ、作品を必要としてくれた瞬間を、その作品の完成とすることもpatch antのコンセプトの一つです。
今回の「TOTE AS CANVAS ART & DESIGN AWARDS」は、patch antとして初めて作品を応募するコンテストです。これまで好きで描き続けてきた表現を、ひとつの作品として外に向けて発表する最初の機会として、この作品を制作しました。
苦労した点やアピールポイントなど
表面の細密な描写と、裏面の荒々しいハンドペイントという、対照的な表現を一つのバッグの中に共存させた点が大きな特徴です。
特に時間をかけたのは、中央の二人を囲むフレームです。そこに描かれているモチーフはすべて、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの作品、出来事、衣装、グラフィックなどから拾い集めたものです。すぐに分かるものだけではなく、よく見ると「これはあの時のものではないか」と発見できるような、宝探しのような要素を入れています。
また、人物の表情を覆う白いドットは、完全に隠しすぎず、それでいて新品の状態では少しモザイクがかかって見える量になるよう、バランスを考えながら一つずつ重ねました。
この白い層は、使用による擦れやひび割れによって少しずつ変化し、その下に描かれた「YES」と二人の表情が徐々に現れていきます。逆に裏面の赤い「YES」は、使い込むほど少しずつ薄れていきます。
最初から完成された一枚の絵ではなく、使い込むことで表と裏がそれぞれ違う方向に変化していくよう設計しました。
裏面では、シルバーの塗料を二重、三重に重ね、筆跡や飛沫、凹凸をあえて残しています。角度によってメタリックの光が変化し、その上に置いた小さな赤い「YES」にも、滴や飛沫を残すことで強いエネルギーを持たせました。
完成した状態だけでなく、使い始めてから数年後までを含めてデザインした作品です。